日本の組織とその限界と
 東日本大震災の気分的総括について
 切込隊長さんが非常に面白い書き方をしていたので。

 自分にとってもこの危機的状況はまだ始まったばかりで、この後も転がり続ける。
 自分が今持っている悲しみや不安が払拭されることは当面無いだろう。
 そういう状況なのでもうちょっと狭いところの話を。

 我が国の組織や制度運用についての側面で、東京電力はひとつのモデルケースとなりました。簡単に言えば、現場から離れている人が昇進するため、問題が起きたときに組織として対処する能力を著しく欠く、という構造的な欠陥であり、例えばこの問題が他の大組織で起きたとしても、やはり同じように右往左往して問題の解決に至る道筋は遠かったのではないかと予見されます。


 これは自分も最近よく考える。


・偉い人は現場仕事をした事が無い。
・技術と知識は現場が持っている。
・何かあった時、偉い人では対処が出来ない。
・現場は偉い人が何をどうなしたいかを把握していない。
・現場は戦局よりも作戦が大事。
・すくなくとも誰もかれも自分が一番大事。

 こんな感じ。
 現場の立場と偉い人の立場が離れ過ぎると、どうにも組織として脆弱になる。
 今はそういう組織ばっかりだ。日本政府もそうだし東電とかそう見える。ゲーム会社にも多い。

 これはかつて「ピラミッド型」だった組織を、上層部が利潤のために中間層をカットし「画鋲」のように一部のトップとその他大勢の労働者という座組みにした結果だと思う。

 中間管理職減らせば給与減らせるし、トップに盾突く奴も出てこない。
 実際のところ、まったく役に立ってない中間管理職というのも存在していてるし、確かに削りたい。
 結果組織の画鋲化は進んで現在に至ると思う。


 しかしだ。

 単純なモデルの話だと、軍隊には「新兵」と「将校」の間に「鬼軍曹」が居て。これが中間管理職。
 ピラミッドから画鋲に変化する際に一番カットされるのがこの軍曹。

 確かにはたから見ていると、軍曹は「あれをしろ」「これをしろ」「失敗するな」と言ってるだけだから、誰にでもできそうに見える。マニュアル化したら不要じゃないの?みたいな。

 実際カットしても平常時はちゃんと組織が動く。大した判断が必要じゃないから。

 しかし重要な決断の時、非常時には軍曹は実は重要だ。

 軍曹のやってる指示出しと、上層部がやる指示出しには違いがある。

 最大の違いは、「軍曹は指示を出された事がある」ということだ。

 一度同じ苦労、危険、経験をしている人間の指示は、意味がある。
 東電の社長に「行け」と言われて行く気はせぬが、レスキュー隊長に「行こう」と言われりゃ考える。
 まぁこれは8割は嘘だが。そういう心の問題ではない。

 これから始まる戦闘の。今から始まるデスマーチの。今進行しているプロジェクトの。中身に詳しく似た現場での経験を積んでいる人間の意見というのは自然と耳が傾けられる。傾けざるを得ない。

 無理な作戦は無理と言う。
 最適な作戦の提案が現場視点から出来る。

 軍曹のポジションというのはそういう仕事でもある。

 それを理解せずに軍曹をカットしたり、軍曹に権限のない組織を作ると、非常にモロイ組織となる。




 軍曹など不要だ、将校が指示を出せばいい。
 画鋲型を選択した組織の上層部はそう考えるのだろう。あんな仕事誰でも出来る。俺でも出来る。

 しかし軍曹の仕事を軍曹でなく将校がやるとロクなことにならない。

 限界を超えてポンプ車を長時間回して壊してしまう。怒鳴り散らし怒るしか人を動かせなくなってしまう。士気を下げる。現場的には無理なものは無理なので、従うけども結果は出ないよ。という事態も発生する。

 その上、現場に居ない人は事態の価値把握がおかしいので、こんにゃくゼリーは飲んだら死ぬけど、プルトニウムは平気とかいう判断だって、やりかねない。
 なんでそんな判断しちゃうかというと利権の問題なんだろう。
 しかし、それでは切り抜けられない危機がある。




 戦略的視点で行う判断と、戦術的視点で行う判断はそもそも違って当たり前だが、戦術知識がなければまともな戦略かどうかの判断は出来まい。

 なぜか、戦術知識で戦略を立てれないのは周知だが、逆に思い至らぬ人は以外に多い。ああ大企業病か。それとも自分の能力を過剰評価しているのか。

 日本の組織は、難しくリスキーなことは下請けになげて、重要な仕事は「意思決定のみ」と思っているパターンが多いが、この場合彼らの力は「意思決定」の力でなく「スケールメリット」による金の暴力だけだったりする。

 このあたりが、今のどうにもならない閉塞間を生んでいるのだろう。
 緊急時に何も出来ない組織の脆弱さも、そこにある。

 経営陣に現場を知れという気はまるでない。人間が見れる知れる範囲には限界がある。
 だが現実を知る必要はある。




 やはり組織を動かすのは人なので。
 人と言うのは、人と人とで結びついて動いてナンボなので。
 人間なんてこれほど個体では弱い生物が群体となった時は地球を破壊する程のパワーと英知を生むわけで。
 人が群体として動くには、それなりのシステムが必要。
 システムを回すにはそれなりの熟練者が必要。

 正に今、危機的状況において、画鋲型組織の限界が見えている。
 日本政府にせよ、東電にせよ、そのトップに現実が見えているようには感じられない。
 現実はいつも、もれなくドブの中だ。

 ふんぞった椅子から見える景色と地ベタの景色は異なる。
 でも世の中の大半以上は地ベタだ。

 地ベタを理解しないまま世の中は理解できない。




 最近仕事がきつく、移動中に本を読むこともママならない。
 なんとなくスマホでwebを俳諧している。ウンザリするニュースばかりだ。

 ドブに足突っ込まずに生きていけるのは幸せだろうけども、それはドブの中を見殺しにしている。
 利益はドブから得てるにも拘らず。

 参るわー。

2011/04/05(火) 01:51:50| 固定リンク|日記| トラックバック:3 | このエントリーを含むはてなブックマーク|
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2011/04/06(水) 03:52:14 | 障害報告@webry
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